5つの患者ニーズ
ニーズに対応してクリニックのサービスラインを構築
マーケティングツールの3P、もしくは4Pを考えるとき、製品(Product)で品質を考えます。このとき、誰にとっての、という視点が必要です。一般事業分野においては、技術力に自信のある製品志向の企業が陥りやすいミスとして、顧客の意見にほとんど聞く耳を持たずに開発してしまうことはよく知られています。例えば今、3Dテレビはどれくらい普及しているでしょうか。次世代テレビとして大々的にプロモーションされた時期もありましたが、家電量販店でもすっかり見かけなくなりました。日本全体をターゲット市場にしているような大企業であれば、市場にニーズを作り出していくという戦略も、なくはないのかもしれません。しかし、限られた資本で経営するクリニックでは、そういうギャンブルのようなことはやっていられません。今実際にあるニーズを相手にすべきです。
ニーズの洗い出しについては、スタッフミーティングのテーマにすることも多いのですが、恐らく単発で挙げることがほとんどと思います。単発で挙げると、最初のうちは威勢よくポンポン出てくるのですが、20個くらいでピタッと止まり、あとはひたすら停滞ということになっていないでしょうか。また、出し切った後のニーズとアクションがなかなか結びつかない、ということになっていないでしょうか。
マーケティングにおいてニーズを考えるとき、1人につき次の5つのニーズがあると言われています。
1.明言されたニーズ
2.真のニーズ
3.明言されないニーズ
4.喜びのニーズ
5.隠れたニーズ
例えば歯科クリニックで、「物を噛むと左下の奥歯が痛いので、治療して欲しい」(明言されたニーズ)という患者がやってきたとします。その患者は、「なるべく痛くないようにやって欲しい」(明言されないニーズ)と思っており、虫歯ならばしかるべき治療をしてほしいけれども、虫歯でないならば「痛みなく食事ができれば良い」(真のニーズ)と思っていました。調べたところやはり虫歯だったので治療に入ろうとした段階で、「一週間後に大事な食事会があるので、すぐに治療を開始して左側で食べられない状態で不自由に食事会を過ごすよりは、ひとまずの応急処置でなんとか左でも食事できる状態で食事会をクリアしたい」(隠れたニーズ)ということが分かったので、本格的な治療は食事会の後から開始したが、「思ったより費用が安く治療できた」(明言されないニーズ)し、「以前(痛みを感じる前)よりもしっかりと物を噛めるようになった感じがする」(喜びのニーズ)ので非常に喜んでいる。
この患者は実在します。